遺産分割による相続登記

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相続登記の種類は、大きく次の3つに分けることができます。

(1)遺言による相続登記
(2)遺産分割による相続登記
(3)法定相続による相続登記

まず遺言が優先し、遺言がない場合は、相続人全員の話し合いで遺産分割協議による相続登記をすることができますが、話し合いがまとまらず遺産分割協議が不成立に終わったときや、遺産分割協議をしていない場合は、法律の定めに従い法定相続分のとおりに登記します。

また、法定相続人が一人の場合も、遺産分割協議の余地はないので、法定相続による相続登記をすることになります。


遺産分割協議とは


法律で法定相続分は定められていますが、法定相続分とは関係なく誰が何を相続するかの遺産の分け方を決める相続人全員による話し合いを遺産分割協議といいます。そして、その話し合いの結果を遺産分割協議書にして、その協議書を添付して相続登記をするのが一般的です。

協議による分割は、内容的にはどのような分割がされても自由です。たとえば、父親名義の土地を長男1人に相続させたい場合には、土地については長男が相続する、と決めれば足り、他の子は何も相続しない旨を遺産分割協議書に記載する必要はありません。

遺産分割協議は全員参加が必要


遺産分割協議には共同相続人全員の参加が必要です。一部の相続人を除外してなされた遺産分割協議は無効です。

遺産分割協議の当事者には、相続人のほか次の者も含まれます。
① 包括受遺者は相続人と同一資格で遺産分割協議に参加します(民法990条)。
② 相続分の譲受人も遺産分割協議に参加します(民法905条参照)。
③ 家庭裁判所の許可を得た不在者財産管理人も遺産分割協議に参加します。
④ 遺言執行者(民法1012条)。

相続人が一堂に会せない場合


遺産分割協議は、相続人全員が一堂に会して協議をするのが望ましいのですが、遺産分割協議を成立させるために、一堂に会さなくても、相続人の一人が作成した遺産分割協議書を持ち回りで全員が承認する方法でもかまいません。また、同一内容の書面を相続人分作成して、それに各自署名押印してもらい、それらを全部合わせて1通の遺産分割協議書とすることも可能です。


特別受益と寄与分


相続における公平を図る制度

特別受益とは


共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、あるいは生前に婚姻や養子縁組のため、又は生計の資本として贈与を受けた者がいる場合、このような共同相続人に対する遺贈又は一定の生前贈与など、被相続人から受けた特別の利益を特別受益といいます。

各相続人が実際に受ける相続分を算出する場合に、もし、これらを考慮しないとすると、相続人間に不公平を生じ、被相続人の意思に反することになるかもしれません。

そこで、このような特別受益がある場合には、これを相続分の前渡しとみて、現実の相続財産に、その贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、これを前提に各相続人の相続分を決めます。
さらに特別の利益を受けた者(特別受益者)については、相続分から特別受益分を差し引いて取り分を決めるのです(民法903条1項)。

たとえば、被相続人が死亡し、遺産は5,000万円でした。相続人は妻、長男、長女の3人で、長男は住宅購入資金として1,000万円の贈与を受けています。 

この場合の各相続人の具体的相続額は次のとおりになります。

妻  (5,000 + 1,000)× 2分の1 =  3,000万円
長男 (5,000 + 1,000)× 4分の1-1,000 =  500万円
長女 (5,000 + 1,000)× 4分の1 =  1,500万円

民法上、「特別受益」とみなされるのは、次の場合です。

(1)被相続人から遺贈を受ける場合
(2)被相続人から婚姻、養子縁組のための贈与を受ける場合
(3)被相続人から生計の資本として贈与を受ける場合

寄与分制度


たとえば、被相続人の長男が長いこと家業を手伝ってこれを維持し、二男がサラリーマンとして独立している場合において、長男の寄与・貢献を考慮しないで、均等に遺産が分配されるのは不公平ということになるでしょう。

民法904条の2は、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした者は、寄与のない相続人よりも多くの財産を受け取ることができるという規定です。そして、この多く受け取る部分を寄与分といいます。

寄与分がある場合は、被相続人が相続開始の時点で有した財産の価額から、寄与分を控除したものを相続財産の全体とみなし、そして、これに寄与分を加えた額を寄与相続人の取り分とします。

寄与分は、相続人全員の協議によって定めるのが原則です。

寄与分を受けることができる者は、現実に遺産分割協議に参加することができる共同相続人に限られます。寄与分は、遺産分割における指定又は法定の相続分の修正要素として考えられているからです。

したがって、配偶者と子が共同相続人である場合において、仮に、相続人でない直系尊属や兄弟姉妹の中に特別の寄与をした者があったとしても、寄与分を請求することはできません。

寄与分が認められる場合

(1)被相続人の事業に関する労務の提供
(2)被相続人の事業に関する財産上の寄与
(3)被相続人の療養看護

ただし、上の(1)~(3)に該当する場合でも、その行為が被相続人と相続人との身分関係から通常必要とされる扶助の範囲内であれば、特別寄与とはなりません。さらに、(1)~(3)の行為の結果、現実に相続財産が維持・増加していなければ、特別寄与にはなりません。


子が未成年者の場合


子が未成年の場合に、親権者である母親と子が遺産分割協議をするのはお互いの利益が相反する行為になりますので(民法826条)、この場合には、親権者である母親は子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなくてはなりません。そして、母親と特別代理人とが遺産分割協議をすることになります。

もし、子が複数いる場合には、未成年者1人ごとに別の特別代理人を選任しなければなりません。

家庭裁判所への特別代理人の選任申立方法

申立てができる人 親権者、親権者以外の相続人
管轄裁判所 子の住所地の家庭裁判所
費用 子1人につき800円分の収入印紙
連絡用の郵便切手
必要書類 申立書、添付書類(下記参照)

 
添付書類
下記の添付書類は、原則、原本提出となります。
・申立人(親権者)、未成年者の戸籍謄本各1通
・特別代理人候補者の戸籍謄本、住民票各1通
・利益相反行為に関する書面(遺産分割協議書の案)
(家庭裁判所から、必要に応じて上記以外の追加書類の提出を求められる場合があります。)

特別代理人選任の手続きは、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人選任申立書を提出しておこないます。その際、特別代理人の候補者を申立書に記載することになっています。特別代理人の候補者に関して特別の制限はありません。

特別代理人は家庭裁判所が選任するので、希望どおりに特別代理人候補者が選任されるとはかぎりませんが、実際には申立書に記載した特別代理人候補者がそのまま選任されることがほとんどのようです。

申立書
申立書は、家庭裁判所の窓口でもらうことができます。また、裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
裁判所 特別代理人選任の申立書(遺産分割協議)


相続人が胎児である場合

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胎児は、相続については既に生まれたものとみなされます(民法886条1項)。胎児が生きて生まれれば、相続開始の時から相続人であったことになりますが、死産であった場合には、相続権はなかったことになります。

このような不安定な状況にある胎児を相続人として遺産分割協議をするのは、好ましくありませんので、登記の実務においても胎児の出生前においては、相続関係が確定していないので、胎児のために遺産分割協議はできないと解されています。

したがって、生まれるだいたいの時期も分っているのですから、分割を成立させるのはそれまで待つ、というのが現実的でしょう。この場合も、母親が共同相続人であればやはり子の代理はできず、特別代理人の選任が必要になります。


養子に行った子がいる場合


養子に行っても、実親の相続権は失いませんので、養子に行った子も遺産分割協議に参加しなければなりません。ただし、特別養子は実親の相続権を失います(民法817条の9)ので、遺産分割協議には参加できません。


結婚した娘は


「結婚した娘も相続権があるのか」という疑問が生じるかもしれませんが、結婚して家を出た子にも相続権はありますので、遺産分割協議に参加しなければなりません。


話し合いがまとまらない場合は、調停・審判


遺産分割は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって決めるのが原則です。したがって、一人でも分割に応じない相続人がいれば、有効な遺産分割協議はできません。話し合いによる解決ができない場合には、裁判所における手続きに持ち込まれることになります。これを扱うのは家庭裁判所です。遺産分割の裁判手続としては調停審判があります。

ここではまず遺産分割調停という手続きがとられます。

申立書
遺産分割調停の申立書は、家庭裁判所の窓口でもらうことができます。また、裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
裁判所 遺産分割調停

遺産分割調停は、家庭裁判所から選任された調停委員(または裁判官)が間に入って話し合いで解決を図るものです。ここで話がまとまれば、その遺産分割案が調停調書に記載され、この調停調書をもとに、預貯金や不動産の名義変更手続きを進めることが出来ます。

調停は、あくまでも相続人の話し合いによる解決をはかることを目的としている制度であり、調停委員の分割案や助言に強制力はありません。したがって、共同相続人のうち誰か1人でも遺産分割案に応じない者がいれば調停は不成立となります。

調停が不成立になった場合には、遺産分割審判に自動的に移行されますので、別途、審判の申立てをする必要はありません。

審判は、家庭裁判所でおこなう一種の裁判と考えてよいでしょう。ただ、通常の裁判とは様式が少し異なり、問題の相続財産について審判官が職権で様々な調査をしたうえで、最終的な決定を下すことになります。

もしこれに対して不服がある場合は、審判書を受け取ってから2週間以内であれば、高等裁判所に不服申立てをすることができます。この申立てがなければ、審判は通常の裁判の確定判決と同様の効力を生じます。


遺産分割協議書 見本

 

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遺産分割協議書
        (注1)
被相続人大山太郎(本籍 東京都中央区○○二丁目45番地)は平成○○年
○○月○○日死亡したので、その相続人大山花子、大山一郎、大山二郎は、被
相続人の遺産につき次のとおりに分割することを協議した。

1 大山花子は、次の遺産を取得する。
・  株式会社○○銀行千葉支店の被相続人名義の預金
・   普通預金 350万円
   定期預金 180万円

2 大山一郎は、次の遺産を取得する。
・  所   在  東京都中央区○○二丁目
  地   番    45番12
  地   目    宅地
  地   積      113・32平方メートル

・  所   在  東京都中央区○○二丁目 45番地12
  家屋 番号  45番12
  種   類  居宅
  構   造  木造スレートぶき2階建
  床 面 積  1階 55・37平方メートル
         2階 48・02平方メートル

3 大山二郎は、次の遺産を取得する。
・  株式会社△△銀行千葉支店の被相続人名義の預金
・   普通預金 530万円

以上のとおり分割協議が成立したことを証するため、相続人全員が署名押印
した本協議書3通を作成し、各相続人において各1通を保有するものとする。

   平成○〇年○○月○○日

        東京都中央区○○二丁目7番4号
         大 山 花 子      
      東京都中央区○○二丁目7番1号
         大 山 一 郎      
      東京都中央区○○二丁目7番6号
         大 山 二 郎      


(注1)誰の遺産分割協議なのかを明らかにするために、被相続人を本籍または住所
  等で特定する必要があります。


相続関係説明図 遺産分割 見本


(注1)遺産分割協議により、不動産を相続しない相続人は(分割)又は(遺産分割)
・  と記入します。


遺産分割による相続登記の必要書類


被相続人
○住民票の除票又は戸籍の附票
(住民票の除票は住所地、戸籍附票は本籍地の市役所、区役所で取れます。)
○出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍等の謄本
(本籍地の市役所、区役所、被相続人の婚姻前は親の本籍地の市役所等です。
遠方の場合は郵送で取り寄せます。)
○固定資産税評価証明書(不動産所在地の市役所、区役所等で取れます。)

相続人
○相続人全員の戸籍謄本(被相続人の戸籍謄本と重複する場合は不要です)
○不動産を取得する相続人の住民票又は戸籍附票
〇遺産分割協議書(相続人全員の実印を押印)
○相続人全員の印鑑証明書


登記申請書 遺産分割 見本

 

            登 記 申 請 書

登記の目的  所有権移転

原   因  平成○○年○○月○○日相続

相 続 人   (被相続人 大山太郎)
       東京都中央区○○二丁目7番1号
           大 山 一 郎   
・      連絡先の電話番号 03-○○○○-○○○○

添付情報   登記原因証明情報  住所証明情報

平成○○年○○月○日申請 東京法務局

課税価格     金2,000万円

登録免許税    金8万円

不動産の表示
 所   在  東京都中央区○○二丁目
 地   番    45番12
 地   目    宅地
 地   積      113・32平方メートル

・ 所   在  東京都中央区○○二丁目 45番地12
 家屋 番号  45番12
 種   類  居宅
 構   造  木造スレートぶき2階建
 床 面 積  1階 55・37平方メートル
        2階 48・02平方メートル


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