商号(会社の名称)の定め方と法令等による制限


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商号の意義と商号選定自由の原則


会社の商号とは、会社が営業上自己を表示するために用いる名称です。会社が商号としていかなる名称を用いるかは原則として自由です(商号選定自由の原則(商法11条、会社法6条第1項))。


商号選定自由の原則に対する制限


商号を使用して営業を継続することによって、商号に対する信用や名声が商号に化体され、商号に独自の経済的価値が発生するので、商号を使用する商人の利益の保護及び商号に対する一般人の信頼を保護し、取引主体の誤認混同等を防止する必要が生じます。

そこで、商号選定自由の原則に対する制限として次のようなものが定められています。

(1) 同一商号・同一本店の禁止
会社法の施行により、類似商号の調査をする必要はなくなりましたが、他の会社が既に登記した商号と同一の商号を用い、かつ、その本店の所在場所が当該他の会社の本店の所在場所と同一であるときは、登記をすることができません(商業登記法27条)。

そのため、会社を設立しようとする場合や商号を変更しようとする場合には、同一商号の会社が本店所在地と同一場所に存在していないかどうかを調査する必要があります。このような調査を「商号調査」と呼んでいます。

商号調査」の方法としては、
① オンライン登記情報検索サービスを利用して調査する方法
② 会社の本店所在地を管轄する法務局に設置されている専用端末を利用して調査する方法
の二つがあります。

① のオンライン登記情報検索サービスとは
「登記・供託オンライン申請システム」の簡単証明書請求を利用して、申請の対象となる会社の商号、所在地及び会社法人等番号を検索することができるサービスです。

初めて「登記・供託オンライン申請システム」をご利用になる方は、「登記・供託オンライン申請システム」に申請者情報を登録して、ログインに必要な「申請者ID」と「パスワード」を取得していただく必要があります(無料)。

 登記・供託オンライン申請システム  法務省

詳しくは、「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」をご参照ください。

 オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について  法務省

ただし、上記の「同一商号・同一本店の禁止」の規定に抵触するようなケースは、現実にはほとんどあり得ませんので、念のためにチェックする程度で大丈夫と思います。

なお、「同一の商号」とは、会社の種類を表す部分を含め、商号全体の表記そのものが完全に一致することをいいます。漢字と平仮名のように、読み方が同一であっても表記が異なるときは、同一の商号には当たりません。

「同一の本店」とは、既に登記された他の会社の本店の所在場所と区分することができない場所に本店があることをいいます。例えば、他の会社の本店が「東京都新宿区○○一丁目2番3号甲野ビル」と既に登記されているときは、同一商号の会社は、本店を「東京都新宿区○○一丁目2番3号甲野ビル3階」として登記することはできません。

他の会社の本店が「東京都新宿区○○一丁目2番3号甲野ビル3階」と既に登記されているときは、同一商号の会社は、本店を「東京都新宿区○○一丁目2番3号甲野ビル4階」として登記することができることになります。

(2) 「株式会社」という文字の使用
会社は、その商号中に、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれ株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければなりません(会社法6条第2項)。

なお、商号中の「株式会社」の文字は、片仮名又は平仮名をもって表示することはできません(登記研究124号47頁)。

(3) 使用可能な文字等
商号の登記に用いることができるのは、日本文字のほか、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものに限られます(商業登記規則50条、平成14年法務省告示315号)。
ローマ字その他の符号としては、次のものがこれに該当します。
① ローマ字(AからZまでの大文字及びこれらの小文字)
 ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を空白 (スペース)によって区切ることも差し支えないとされています(例えば「株式会社 D. G.」、「大阪Air Cargo株式会社」など)。
② アラビア数字
③ 次の6種類の符号
(a)「&」(アンパサンド)
(b)「’」(アポストロフィー)
(c)「,」(コンマ)
(d)「-」(ハイフン)
(e)「.」(ピリオド)
(f)「・」(中点)
なお、上記(a)から(f)までの符号は、字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができ、会社の種類を表すを除いた商号の先頭又は末尾に用いることはできません。ただし、ピリオドについては、その直前にローマ字を用いた場合に省略を表すものとして、会社の種類を表す部分を除いた商号の末尾にも用いることができます。

(4) 法令による名称使用制限
銀行業、保険業、信託業等の公益性の高い事業については、法令の規定により、当該事業を営む者はその商号中に「銀行」、「生命保険」、「信託」等の文字を使用しなければならず、それ以外の者は銀行、保険会社、信託会社等であると誤認されるおそれのある文字を使用してはならないとされる場合が多いです(銀行法6条、保険業法7条、信託業法14条)。

(5) 公序良俗に反する商号の禁止
公序良俗に反する商号は、使用することができません(民法90条)。
商号が公序良俗に反するか否かについては、会社の事業目的との関連をも考慮して、個別に判断する必要があります。

(6) 不正競争の目的による商号使用の禁止
不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用することは禁じられています(会社法8条第1項)。

この場合、その商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して、その侵害の停止又は予防を請求することができます(会社法8条第2項)。

(7) 不正競争防止法による制限
たとえば、キャノン、ブリヂストン、ソニー、パナソニックなどのように広く認識されている商号や商標等と同一又は類似の商号や商標等を使用した商品を販売し、又は譲渡等をして他人の商号や商標等を使用した商品と混同誤認を生じさせた会社等に対して、使用された会社は、その商号や商標等の使用の差止めと損害賠償請求をすることができます(不正競争防止法3条~5条)。


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