解散・清算人・清算結了の登記

解散事由(解散の原因)


解散事由(解散の原因)として、会社法では次のものが定められています(会社法471条)。 
① 定款で定めた存続期間の満了
② 定款で定めた解散事由の発生
③ 株主総会の特別決議
  なお、合同会社の場合は総社員の同意により解散します(会社法641条3号)。 
④ 合併(合併により会社が消滅する場合に限る。)
⑤ 破産手続開始の決定
  会社は、破産手続開始の決定の時に解散します(破産法30条2項)。
⑥ 解散命令(会社法824条1項)又は解散判決(会社法833条1項)

上記以外に、「休眠会社のみなし解散」という制度がありますが、これは、休眠会社が法務大臣の定める一定の手続をしなかったときは「解散したものとみなされる」制度(会社法472条1項)で、上記①~⑥の解散事由とは異なりますので、別のページで取り上げます。

司法書士が解散登記を依頼される場合のほとんどが上記③の株主総会の決議による解散なので、このページでは、株主総会の決議による解散についてご説明します。

株式会社は、解散によって清算手続に入り、清算会社として存続しますが、合併の場合を除き、解散によって当然に株式会社の法人格が消滅することはなく、清算手続の終了(清算決了)によって消滅します。

解散及び清算人選任の手続


株式会社は、定款で定めた存続期間・解散事由(上記解散原因の①、②)があっても、株主総会の決議によって解散することができます。

解散事由が株主総会の決議による場合でも、清算人の選任は株主総会の選任による清算人である必要はありません。清算人には、①清算開始時の取締役(法定清算人)、②定款で定める者、③株主総会の選任による清算人、④裁判所選任の清算人があります。

株主総会の決議によって解散した場合には、株主総会の通常決議の方法(普通決議)によって清算人を選任する場合が多いです。

清算人の員数については、定款に別段の定めがない限り1人でも差し支えありませんが、清算人会を設置したい場合は、3人以上選任する必要があります。

清算人となる者がいないときは、利害関係人の申立てにより裁判所が選任します。

解散・清算人の登記の申請手続


解散及び清算人の登記の申請は、法律上同時に申請しなければならないという規定はありませんが、解散の登記の申請書には、清算人の資格を証する書面の添付が必要になるので、同時に申請した方がよいと考えられ、原則として同時に申請します。

株式会社が解散し、清算人が株主総会で選任されたときから、本店の所在地においては2週間以内に、解散の登記については「解散の旨並びにその事由及び年月日」の事項を、清算人の登記については「清算人の氏名、代表清算人の氏名及び住所、清算株式会社が清算人会設置会社であるときはその旨」の事項を登記しなければなりません。

会社が解散すると、取締役・代表取締役は退任し、新たに選任された清算人・代表清算人が清算手続を進めることになりますが、取締役の退任登記は不要です。後記のとおり、取締役、代表取締役、取締役会設置会社である旨の登記等は解散の登記時に登記官の職権で抹消されます。

なお、監査役については、解散後も退任することはなく、引き続き登記されます。監査役、監査役設置会社に関する事項は、職権抹消の対象とされていません。なお、監査役設置会社であった場合、原則として継続しますが、監査役設置会社である旨の定めを廃止することもできます。

株式の譲渡制限に関する規定
解散と同時に取締役会は廃止されるため、承認機関を株主総会等に変更する必要があるので、会社法施行当初は、解散登記と併せて株式の譲渡制限に関する規定の変更登記を申請しなければならないとされていました。しかし、現在は、株式の譲渡制限に関する規定の変更登記を申請しなくとも受理される扱いとなっています。

解散・清算人の登記の必要書類
・定款
登記所において、清算人会設置会社の定めの有無を確認するとともに、定款で定める者が清算人になる場合にはその定めを確認し、又、取締役が法定清算人となる場合には定款に特段の定めがないことを確認するため、定款が添付書面とされています。
・株主総会議事録
・株主リスト
・代表清算人の印鑑証明書

〇印鑑届書
登記申請の添付書面ではありませんが、印鑑提出者の資格が代表取締役から代表清算人に変更になるため、代表清算人は、その印鑑を登記所に提出して、申請書又は司法書士への委任状に、提出した印鑑と同一の印鑑を押さなければなりません。

解散・清算人の登記の費用・報酬等


解散の登記については、申請1件につき3万円であり、最初の清算人の登記については、申請1件につき9,000円です。

司法書士に依頼した場合の手数料
株式会社の解散登記、清算人選任登記等を司法書士に依頼した場合の司法書士の手数料は、4万円~7万円程度です。

職権抹消事項


解散の登記をしたときは、登記官は、次の登記を抹消しなければならないとされています。
① 取締役会設置会社である旨の登記、取締役・代表取締役・社外取締役に関する登記
② 特別取締役による議決の定めがある旨の登記及び特別取締役に関する登記
③ 会計参与設置会社である旨の登記、会計参与に関する登記
④ 会計監査人設置会社である旨の登記、会計監査人に関する登記
⑤ 監査等委員会設置会社である旨の登記、監査等委員である取締役に関する登記、重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある旨の登記
⑥ 指名委員会等設置会社である旨の登記、委員・執行役・代表執行役に関する登記
⑦ 支配人に関する登記

解散公告及び知れたる債権者への催告


清算会社は、解散後、遅滞なく、当該清算会社の債権者に対し、一定の期間内(2か月未満であってはならない)にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならないとされています(会社法499条1項)。

清算事務の終了・清算結了登記


1 清算会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければなりません。
2 清算人は、決算報告を株主総会に提出し、普通決議による承認を受けなければなりません。
3 株主総会の承認により清算が結了したときは、清算会社は、株主総会の承認の日から2週間以内に、その本店の所在地において清算結了登記の申請をしなければなりません。

なお、上記のとおり、清算会社は、解散後、遅滞なく、債権者に対し、2か月を下らない一定の期間を定めて債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならないとされ、又、この期間が満了しなければ債権者に債務の弁済をすることができないとされています。

したがって、清算事務は、解散後2か月以内に終了することはありえないことになるので、会社解散の日から2か月以内にされた株式会社の清算結了の登記申請は受理されません。

登記事項
清算結了した旨及びその年月日

添付書面
・株主総会議事録
・株主リスト
・決算報告書

清算結了登記の費用・報酬等


申請1件につき2,000円

司法書士に依頼した場合の手数料
株式会社の清算結了登記を司法書士に依頼した場合の司法書士の手数料は、1万円~2万円程度です。

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