有限会社から株式会社への商号(組織)変更による移行


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 有限会社の取扱いについて  

移行のための商号変更の手続


特例有限会社は、株主総会の特別決議により、定款を変更してその商号中に「株式会社」という文字を用いる商号の変更をすることができ、当該定款の変更の効力は、移行の登記をすることによって生ずるとされています(整備法45条)。


解散の登記と設立の登記を同時申請


上記のように、株主総会の特別決議によって定款を変更して株式会社としたときは、本店の所在地においては2週間以内に、支店の所在地においては3週間以内に、特例有限会社については解散の登記を、商号変更後の株式会社については設立の登記をしなければなりません。

この場合、特例有限会社の解散の登記と商号変更後の株式会社の設立の登記は、同時に申請しなければならず、いずれかに却下事由があるときは、共に却下されることになります。


株式会社移行のメリット・デメリット


特例有限会社から通常の株式会社へ移行すると、どのようなメリットがあるのか、デメリットがあるのか、主なものをピックアップしてみました。

移行のメリット
① 商号に株式会社の文字を使用できます。
② 株式の譲渡制限に関する定款の定めを廃止し、公開会社となることができます。
③ 機関設計に柔軟に対応でき、取締役会の設置、会計参与の設置、会計監査人の設置等が可能となります。
④ 他社を吸収合併すること、他社の事業を吸収分割により承継することができるようになります。
⑤ 株式交換、株式移転をすることができるようになります。
⑥ 特別清算制度の適用があります。

移行のデメリット
① 取締役の任期が法定され(選任後2年、定款で10年まで伸長可)、監査役の任期も法定される(選任後4年、定款で10年まで伸長可)ため、定期的に役員の変更登記の申請が必要になります。
② 休眠会社のみなし解散の規定が適用されることになります。
③ 計算書類の公告が必要となります。
④ 附属明細書の作成が、例外なく、必要となります。


株式会社移行と同時に登記事項を変更する場合


通常の株式会社への移行のための商号を変更する定款の変更と同時に、目的、役員、発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定、その他の登記事項の変更が生じる場合には、商号の変更後の株式会社においてする設立の登記申請書に、変更後の登記事項を直接記載することができるとされています。

上記の商号変更の登記と同時にする登記事項の変更登記には、別途登録免許税は課されませんので、登記事項の変更が生じる場合には、株式会社への移行を機に、併せて変更しておいたほうが、登録免許税等の費用軽減となります。

特例有限会社の登記事項を特段変更する必要がない場合においても、発行可能株式総数の変更を検討することは有効です。
特例有限会社においては、整備法が施行された日に、職権により、発行可能株式総数と発行済株式の総数は同数で登記されているため、整備法施行後に発行可能株式総数を増加していない場合において、後日、募集株式を発行する場合には、発行可能株式総数を増加させなければなりません。

そこで、株式会社への移行と同時に、発行可能株式総数を変更しておけば、募集株式の発行時に、改めて、定款変更、登記変更手続をする必要がなく、本来必要な当該手続のための登録免許税等の負担も、株式会社への移行と同時にすれば不要となります。

ただし、商号を変更する定款変更の効力発生日は、商号の変更後の株式会社の設立の登記の日であるとされているため(整備法45条2項)、商号以外の事項を変更する定款変更についても、同日を効力発生日とする条件(停止条件付株主総会決議)を付す必要があるとされています。

移行よる設立の登記と併せて取締役会設置会社である旨の登記をすることができるか


できます。
定款に取締役会設置会社の定めとともに代表取締役の氏名等を併せて定め、これらの定めの効力発生時を移行による設立の登記日とすることで、移行による設立登記と併せて、代表取締役の登記及び取締役会設置会社の定めの設定の登記を申請することができます。

株式会社移行による設立の登記と併せて本店移転の登記をすることができるか


本店移転登記については、管轄外への移転かどうかを問わず、一括申請できません。設立される株式会社の登記には、特例有限会社の商号・商号を変更した旨が登記されますが、特例有限会社の本店を移転した旨の登記がされないため、登記簿上の連続性が確認できないという不都合が生じるからです。

商号変更後の株式会社の登記簿の登記記録に関する事項に、「平成〇年〇月〇日有限会社○○を商号変更し、移行したことにより設立」と登記されることからしても、株式会社への移行の登記は、組織変更と同様に、本店住所の変更を要素としていません。

よって、同じ法務局の管轄内であっても、本店移転と同時に移行の登記を申請することは不可能です。

また、移行の登記には、移行後の株式会社の定款を添付しなければなりません(整備法136条20号)。この定款に、管轄外の本店住所地が記載されていることは、移行に馴染みません。

① 同一管轄内で移転する場合
連件(1/3:本店移転、2/3:商号変更による設立、3/3:特例有限会社の解散)で申請することになります。

② 登記所の管轄を異にする所在地に本店を移転する場合
通常、特例有限会社の状態で本店を移転し、新所在地において商号変更による設立及び特例有限会社の解散登記を行うことになります。


株式会社移行に際し作成する定款の内容

 
基本的には、新たに株式会社を設立する場合に作成する通常の定款内容、たとえば、商号・目的・本店所在地等の定款絶対的記載事項、機関の設置等の定款の相対的記載事項、その他任意的記載事項を備えていればよいとされています。
ただし、次の点に留意が必要です。

① 認 証
 株式会社の定款については、公証人の認証を要しません。
② 商 号
 商号「有限会社A」を「株式会社A」と変更するだけでなく、「株式会社B」と変更する等、変更後定款で自由に定めることができます。
③ 目 的
 特例有限会社の目的と同一である必要はありません。
④ 発行可能株式総数
 整備法施行後に発行可能株式総数を増加する変更登記がされていない場合において、株式会社移行に際して募集株式を発行しようとするときは、作成する定款の発行可能株式総数は増加させておく必要があります。
また、募集株式の発行をしない場合でも、特例有限会社当時よりも増加した発行可能株式総数を記載することは可能です。
⑤ 設立に関する事項
 会社自体は特例有限会社として既に成立しているので、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名(名称)・住所、発起人の定款への記名押印、設立時発行株式事項、変態設立事項等の設立に関する事項は、定款に記載することを要しません。
⑥ その他の事項
 株式会社移行に際して作成する定款は、原則として、変更後の商号(株式会社の文字を含む商号)を定めればよいとされています。ただし、移行と同時に目的の変更、機関の設置等を行う場合は、当該変更事項を定款に反映することになります。
⑦ 附則
 一般的に、「この定款は有限会社○○の商号を変更して設立する株式会社○○につき作成したものであって、商号の変更の効力が発生した日から施行する」旨を定款の附則に記載しています。


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