本店移転(会社の住所変更)の登記手続



関連ページ 会社の本店所在地の定め方と注意点

本店移転の手続に関する共通事項


本店移転の登記の手続には、三つの形態があります。各形態ごとに手続構造が異なります。

本店移転の三つの形態
 移転先が同一の登記所の管轄区域内であって、本店を移転するについて定款の変更を要しない場合

 移転先が同一の登記所の管轄区域内であって、本店を移転するについて定款の変更を要する場合

 移転先が他の登記所の管轄区域内である場合 (この場合は常に定款の変更を要します。

定款に記載される「本店の所在地」と登記事項証明書に記載される「本店(の所在場所)」の違い、「会社の本店所在地の決め方」については、「会社の本店所在地の定め方と注意点」のページをご参照ください。

本店移転の形態が異なると、登記の申請手続に違いが出てきます。とりわけ、①、②の場合と③の場合とでは、申請書の様式から、添付書類、登録免許税の額に至るまで、かなり大きな違いがあります。


本店移転登記手続(管轄区域内の移転) (上記の場合)


 管轄区域内の本店移転で、定款の変更を要しない場合とは、定款の「本店の所在地」を「当会社は、本店を京都市に置く。」、「・・・・横浜市に置く。」というように定めている場合に、市内で本店移転する場合や、「東京都新宿区に置く。」と定めている場合に東京都新宿区大久保から東京都新宿区北新宿に移転する場合などが該当します。

もっとも、本店の所在地が、「当会社は、本店を東京都新宿区大久保○丁目1番2号に置く。」のように何丁目何番何号まで定款に記載されている場合には、本店を移転するには必ず定款の変更手続きが必要になりますから②又は③に該当することになります。

 管轄区域内の本店移転で、定款の変更を要する場合とは、定款の「本店の所在地」を「横浜市金沢区に置く。」と定めている場合に横浜市神奈川区に本店移転する場合や、東京都千代田区、中央区、文京区はいずれも東京法務局の本局の管轄であり、東京都渋谷区、目黒区はともに東京法務局渋谷出張所の管轄ですから、東京都文京区から東京都千代田区に本店移転する場合や、東京都目黒区から東京都渋谷区に本店移転する場合などが該当します。

また、埼玉県、茨城県、千葉県では、商業・法人登記に関しては、さいたま地方法務局の本局、水戸地方法務局の本局、千葉地方法務局の本局がそれぞれの県内全域を管轄しますから、埼玉県川口市から埼玉県上尾市への本店移転、茨城県日立市から茨城県土浦市への本店移転、千葉県君津市から千葉県船橋市への本店移転などが該当します。

1 手続
 の場合は、取締役会設置会社においては取締役会の決議、取締役会を置かない株式会社については、取締役の過半数の一致若しくは取締役の決定により、具体的な本店所在場所及び移転時期を定めることによって行います。

 の場合は、株主総会の特別決議により定款を変更した上、取締役会の決議(取締役の過半数の一致)により、移転の時期及び場所(定款の定める最小行政区画内の具体的場所)を定めることによって行います。

2 本店所在地における登記手続
管轄区域外への本店移転(上記の場合)と異なり、管轄登記所に1通の申請書を提出すれば足ります。

ア 登記すべき事項
移転後の本店の所在場所及び移転年月日です。
この移転年月日は、本店を現実に移転した日をいいます。

別紙 登記すべき事項 記載例

「本店」東京都新宿区○○一丁目2番3号
「原因年月日」令和2年3月1日移転

イ 本店移転の日付
本店移転の時期を「令和何年何月何日頃移転する」「令和何年何月何日から令和何年何月何日までの間に移転する」等概括的に定めることも差し支えなく、この場合には、その範囲内で現実に本店移転した日が本店移転の日となります。
ただし、これらの場合に、所定の日又は時期までに現実に本店を移転できなかったときは、本店移転の再決議を要します。

なお、現実に本店を移転した後に、取締役会の承認決議が行われた場合には、その決議の日に移転したものとして取り扱われます。

ウ 添付書面
 の場合
・取締役会議事録(取締役の過半数の一致を証する書面、取締役決定書)
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)

 の場合
・株主総会議事録
・株主リスト
・取締役会議事録(取締役の過半数の一致を証する書面、取締役決定書)
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)

エ 登録免許税
申請1件につき3万円です。


本店移転登記手続(管轄区域外への移転) (上記③ の場合)


1 手続

他の登記所の管轄区域内へ本店を移転する場合は、株主総会の特別決議で定款を変更した上、取締役会の決議(取締役の過半数の一致、取締役の決定)により、具体的な本店の所在場所及び移転時期を定めることによって行います。

本店の移転場所等の決定は、各取締役に委任することはできないものと解されています。

2 登記申請書類の提出先
2件分として作成した登記申請書類、すなわち旧本店の所在地の登記所分の申請書類と新本店の所在地の登記所分の申請書類は、一括して、同時に、旧本店の所在地の登記所に提出する必要があります。新本店の所在地の登記所に直接提出することはできません。

新本店の所在地の登記所宛ての申請書類は、旧本店所在地の登記所において、申請内容について審査を行った後に、職権で、新本店の所在地の登記所に送付されます。

3 登録免許税の額
登録免許税の額は、旧本店の所在地の登記所に対する分3万円、新本店の所在地の登記所に対する分3万円、合計6万円です。各登記申請書別に3万円ずつ納付することになります。

(1)旧本店所在地における登記の申請書
ア 登記すべき事項

移転後の本店の所在場所及び移転年月日です。

別紙 登記すべき事項 記載例

「登記記録に関する事項」
令和2年3月1日東京都新宿区○○一丁目2番3号に本店移転

イ 添付書面
・株主総会議事録
・株主リスト
・取締役会議事録(取締役の過半数の一致を証する書面)
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)

ウ 登録免許税
申請1件につき3万円です。

(2)新本店所在地における登記の申請書
ア 登記すべき事項
登記すべき事項は、次のとおりです。

・設立の登記事項と同一の事項
・設立後に登記されて現に効力を有する独立の登記事項
・会社成立の年月日
・本店を移転した旨及びその年月日
・現に存する役員等の就任年月日

しかし、現在では、新本店所在地における登記の申請書の登記すべき事項に、下記のように新本店と移転日を記載するだけで足りるとされました(平成29・7・6民商111号)。

別紙 登記すべき事項 記載例

「本店」東京都新宿区○○一丁目2番3号
「原因年月日」令和2年3月1日移転

これは、平成27年10月5日に、商業登記法が改正され、登記事項証明書を添付する代わりに申請書に会社法人等番号の記載をもって足りることになったため、この趣旨に鑑みたものです。旧本店所在地の登記申請が本店移転と役員変更等の一括申請であっても、この方法を採用することができます。

イ 添付書面
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)
(添付書面は委任状だけです。)

ウ 登録免許税
申請1件につき3万円です。

エ 印鑑届出
本店を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、会社の代表者は、新本店の所在地の登記所に、印鑑を提出する必要があります。
この場合に、新本店の所在地の登記所に提出する印鑑が旧本店の所在地を管轄する登記所に提出している印鑑と同一であるときは、市区町村長の発行した3か月以内の印鑑証明書の添付を省略することができます。

  印鑑(改印)届書

オ 印鑑カード交付申請書
本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合に、新本店の所在地の登記所に印鑑を提出した者は、印鑑カード交付申請書により、印鑑カードの交付を請求することができます。

  印鑑カード交付申請書


合同会社(持分会社)の本店移転の登記手続


本店移転の三つの形態、申請書の登記すべき事項、登録免許税、印鑑の届出、印鑑カード交付申請書等については、基本的に株式会社(有限会社)の場合と同様なので、上記をご参照ください。

持分会社の本店移転登記では、本店移転の決議の手続と登記申請書の添付書面が株式会社の場合と異なります。

手続
ア 定款変更が不要な場合(上記の場合)
1 業務執行社員の過半数の一致
本店移転に際して、定款の変更が不要な場合には、業務執行社員の過半数の一致によって、具体的な本店所在場所を定める必要があります。

イ 定款変更が必要な場合(上記②、③の場合)
1 総社員の同意
2 業務執行社員の過半数の一致
本店移転に際して、定款の変更が必要な場合には、原則として総社員の同意をもって定款を変更する必要があります。さらに、定款又は総社員の同意により新本店の所在場所を定めないとき(例えば、総社員の同意で本店所在地を最小行政区画のみ定めた場合)には、業務執行社員の過半数の一致によって、具体的な本店所在場所を定める必要があります。

添付書面
1 管轄区域内の本店移転で、定款の変更を要しない場合(上記の場合)
・業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)

2 管轄区域内の本店移転で、定款の変更を要する場合(上記の場合)
・総社員の同意書
・業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
(定款又は総社員の同意により具体的な新本店の所在場所まで定めたときは添付不要です。)
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)

3 他の登記所の管轄区域内へ本店を移転する場合
(1)旧本店所在地における登記の申請
・総社員の同意書
・業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
(定款又は総社員の同意により具体的な新本店の所在場所まで定めたときは添付不要です。)
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)

(2)新本店所在地における登記の申請
・委任状(代理人によって登記を申請する場合)
(添付書面は委任状だけです。)


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