遺言による相続登記


遺言とは


人間は、自分の死後のことまで考えて何か言い残したいものですが、これを形として残すことを「遺言」と言います。
遺言の内容には、たとえば、「兄弟仲良く暮らしなさい」のようなものもあります。
しかし、ここで扱う遺言は、一定の法的保護を与えられる遺言のことです。

遺言能力


遺言をするためには行為能力は必要ではありませんが、意思能力は必要とされています。意思能力については、一般的には10歳未満の幼児や泥酔者などは意思能力がないとされています。
① 未成年者
 満15歳に達した未成年者は、単独で遺言ができるものとされています(民法961条)。
② 成年被後見人
 成年被後見人でも、事理を弁識する能力を一時回復した時は、2人以上の医師の立会いがあれば、単独で有効な遺言をすることができます(民法973条)。

遺言による相続登記


原則として、遺言による相続は、遺産分割協議や法定相続に優先します。相続は、被相続人の財産を承継させる制度ですから、被相続人が自ら自己の財産の行方について最終の意思を表示すれば、これを尊重するのは当然のことといえます。

遺言があれば、原則としてその遺言の記載内容にしたがって相続登記手続をすることになりますが、遺留分による制限があることに注意が必要です。

公正証書遺言の場合は、そのまま相続登記の必要書類として使用できますが、それ以外の遺言書の場合は、家庭裁判所での検認の手続が必要になります。

遺言の種類


遺言の方式は、大別して、普通方式と特別方式の2種類があり、さらに、普通方式は三つに、特別方式は四つに分けられます。

普通方式
①自筆証書遺言 ②公正証書遺言 ③秘密証書遺言
特別方式
①死亡危急者の遺言  ②伝染病隔離者の遺言  ③在船者の遺言  ④船舶遭難者の遺言

特別方式とは、死に瀕してる場合や、航海中の船上にいる場合、伝染病にかかって隔離されている場合など、特定の場合に限って行うことができるもので、例外的な遺言なので、ここでは省略します。

①自筆証書遺言
自筆証書遺言については、 遺言制度に関する見直し 2019年1月13日施行 をご参照ください。

②公正証書遺言
遺言者が公証人と2人以上の証人の前で遺言の趣旨を述べ、公証人がそれを筆記し、これを遺言者と証人に読み上げて確認するといった手続きを経て作成される遺言です。専門家が作成してくれて保管もしてくれるので確実で安全ですが、多少の費用と手間がかかります。家庭裁判所の検認の手続きは必要ありません。したがって、その遺言公正証書により、すぐに登記等の手続きができます。

③秘密証書遺言
遺言者が遺言書を作成、押印し、封印して公証人に提出し、遺言の存在は明らかにしながらも内容は秘して、保管することができる方式の遺言です。多少の手間と費用がかかる、証人2人以上が必要、本人が任意の場所に保管し検認の手続きが必要などのデメリットがあり、あまり利用されてないようです。 

法務局における遺言書の保管制度


法務局における遺言書の保管制度については、 法務局の遺言書の保管制度 2020年7月10日施行 のページをご参照ください。

遺言による相続登記の必要書類


被相続人
〇遺言書
〇死亡の記載ある戸籍謄本
〇住民票の除票又は戸籍の附票

遺言書で指定を受けた相続人
〇住民票
〇戸籍謄本

〇不動産の固定資産評価証明書

遺言書による場合は、印鑑証明書、不動産を取得しない相続人の戸籍謄本・住民票、被相続人の出生まで遡る戸籍関係書類等は不要です。

公正証書遺言の場合は、そのまま相続登記の必要書類として使用できますが、それ以外の遺言書の場合は、家庭裁判所での検認の手続が必要です。


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