権利証、登記識別情報を紛失した場合


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登記識別情報の提供又は登記済証(権利証)を提出できない場合


売買、贈与などによる所有権移転登記、抵当権設定登記、抵当権抹消登記などの登記を申請する場合には、申請人は登記義務者の登記識別情報(英数字の組み合わせによって作成された12文字の情報)を提供又は登記済証(権利証)を提出しなければなりません。

登記識別情報通知書(登記識別情報が記載されている書面)や登記済証が紛失しても再発行はされません。

登記を申請する際にこれらの書類を提出できないと、登記所は申請人が登記義務者本人であることが確認できないので、登記申請を受け付けてくれません。

そのような場合に、不動産の所有者が登記の申請をすることができなくなるのでは、本人だけでなく社会的な損失にもなりかねませんので、登記識別情報、登記済証(権利証)を紛失した場合の登記を申請する方法を説明します。

登記識別情報又は登記済証(権利証)が見つからなくても、次の3つの方法のいずれかの制度を利用することで登記申請をすることができます。

① 事前通知制度(法23条1項)
② 資格者代理人による本人確認情報の提供による申請(法23条4項1号)
③ 公証人による認証制度(法23条4項2号)


登記官は、登記識別情報又は登記済証の提供を要する登記の申請があった場合において、その提供ができない場合には、登記が申請された後、登記官は原則として登記義務者に対して事前通知を行わなければならないと定められています(法23条1項)。

ただし、②の資格者代理人の本人確認情報の提供がある場合、又は③の公証人の認証がある場合であり、且つ、登記官がこれらの内容を相当と認めたときは、事前通知を省略することができます。


① 事前通知制度の方法の流れ


登記識別情報又は登記済証を提供(提出)できない理由(失念、紛失等)を登記申請書に記載して登記を申請する。
   
登記所から登記義務者宛てに本人限定郵便で、「当該申請があったこと」及び「当該申請の内容が真実であるときは通知を発送した日から2週間以内(海外在住者は4週間以内)にその旨の申出をしてもらいたいこと」が通知される。
   
回答欄に氏名を記載し、申請書又は委任状に押印した実印を押印して、窓口に持参するか郵送等の方法により登記所に返送する。
   
事前通知書が登記所に返送され、押印された印が申請書又は委任状に押印された印と相違ないことが確認されると、登記識別情報又は登記済証の提供があったのと同じ効果が生じ、登記の手続きが進められる。

申出が期間内にない場合には、申請は却下されます。

親子、兄弟の間の贈与などでは、事前通知制度を利用してもよいでしょう。

通常の不動産売買の場合、事前通知制度が利用されることはほとんどなく、②の「資格者代理人(司法書士等)による本人確認情報の提供による申請」が利用されています。


② 資格者代理人による本人確認情報の提供制度


登記の申請が、司法書士等の資格者代理人によって行われる場合には、登記申請を担当する司法書士等の資格者が登記義務者本人と直接面談を行い、本人の運転免許証やパスポート等の身分証明書の本人確認書面の提示を受けて、所有者本人であることを確認し、所定の確認方法によって本人確認をした旨を記載した本人に間違いない旨の文書(本人確認情報)を作成します。

この本人確認情報を、登記を申請する際に、登記申請書と一緒に登記所に提出します。登記官がその内容を相当と認めたときは、登記識別情報又は登記済証の提供があったのと同じ効果が生じ、登記手続きが進められます。

ここでいう「資格者代理人による本人確認情報」とは、登記の申請をした資格者代理人が本人確認して作成したものに限ります。したがって、当該登記の申請代理人とならない資格者代理人が本人確認して作成した本人確認情報の提供があっても、本人確認情報とは認められません。

資格者代理人が本人確認情報を提供する場合において、虚偽の情報を提供した場合には、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(法160条)。

資格者代理人が所有者本人であることを確認するための本人確認書面は、次のとおりです。1号書面 顔写真付きの公的身分証明書
ア 運転免許証
イ 個人番号カード
ウ 旅券(パスポート)等
エ 在留カード
オ 特別永住者証明書
カ 運転経歴証明書  以上のうち、いずれか1点以上

2号書面 顔写真のない証明書
ア 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療もしくは介護保険の被保険者証
イ 健康保険日雇特例被保険者手帳
ウ 国家公務員共済組合もしくは地方公務員共済組合の組合員証
エ 私立学校教職員共済制度の加入者証
オ 国民年金手帳
カ 児童扶養手当証書
キ 特別児童扶養手当証書
ク 母子健康手帳
ケ 身体障害者手帳
コ 精神障害者保険福祉手帳
サ 療育手帳
シ 戦傷病者手帳  以上のうち、いずれか2点以上

3号書面 1号書面及び2号書面以外の公的証明書
2号書面に掲げる書類のうちいずれか1点以上及び官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか1点以上

なお、市区町村長の発行する印鑑証明書、住民票の写しは、3号書面には該当しないものとされています。

以上の書類の内容を明らかにするには、これらの書類の写しを添付する方法又は写しと同じ程度に当該書面の内容を特定することができる具体的な事項を本人確認情報の内容とする方法によってするものとされています。

運転免許証やパスポートを所有されていない場合は、お住まいの市区町村役場で顔写真付きの個人番号カードの交付申請をされるとよいと思います。
なお、住民基本台帳カードは、個人番号カードの交付開始に伴い、平成27年12月限りで発行を終了していますが、1号書面としては使えませんのでご注意ください。

資格者代理人による本人確認情報の提供制度を利用する場合、司法書士事務所により異なりますが、本人確認情報の作成には数万円から10万円程度の費用がかかります。


③ 公証人による本人確認制度


権利証等を紛失した場合の本人確認情報は、司法書士だけでなく公証人も作成することができます。公証人役場で、本人確認の証明をしてもらい、登記申請の際に、公証人の認証した文書を登記申請書と一緒に登記所に提出します。

公証人役場には、司法書士に対する登記申請代理の委任状等を事前に作成して持参します。公証人の面前で、これらの書類に、署名、実印を押印し、公証人が、間違いなく本人であることを確認し、その書類が真正なものであることを認証します。

なお、この公証人の認証を取得するためには、ご本人自ら公証人役場に行っていただき、公証人と直接面談し、上記②の資格者代理人の本人確認情報の提供制度の場合と同様、運転免許証、パスポート等の証明書を用意していただく必要があります。

この場合、公証人の手数料は、通常、数千円程度の認証手数料だけで済みます。


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