抵当権の抹消登記
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・関連ページ 抵当権抹消と代表者変更
・ 抵当権抹消登記書類を紛失した場合
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ローンの返済が終わって、抵当権が抹消されると、通常は金融機関から登記識別情報の通知書(又は登記済証)、解除証書(又は弁済証書)、委任状、会社法人等番号等が交付(又は送付)されますので、それに基づいて登記手続きをします。
登記申請手続 |
1 登記の目的
「抵当権抹消」又は「何番抵当権抹消」と記載します。・
2 登記原因及びその日付
抵当権の被担保債権の弁済による消滅の場合には「平成〇年〇月〇日弁済」、抵当権が放棄、解除により消滅した場合には「平成〇年〇月〇日放棄」、「平成〇年〇月〇日解除」とします。
抵当権者が銀行等の金融機関だった場合は、抵当権者が作成した「解除証書」、「弁済証書」等に原因とその日付が記載されていますので、それを記載します。
3 申請人
抵当権抹消の登記は、抵当権の目的たる所有権その他の権利の登記名義人を登記権利者、抵当権者を登記義務者とする共同申請です。
申請書には、権利者として、現在の所有権その他の権利の登記名義人の住所と氏名を、義務者として、抵当権者の住所と氏名を記載します。申請人が法人の場合は、会社法人等番号、本店又は主たる事務所、商号又は名称、代表者の資格及び氏名を記載します。
抵当権付のまま所有権を移転した後に抵当権の抹消登記を申請する場合は、現在の所有権の登記名義人等が登記権利者となります。抹消登記によって利益を受けるのは、現在の所有権登記名義人だからです。
(準)共有者1人からの申請の可否 |
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① 登記権利者1人の申請
共有不動産に設定された抵当権の抹消登記の申請は、共有者全員が共同して行うことも、共有者の1人が登記権利者となって登記義務者と共同して行うことも可能です。登記権利者の行為は、民法252条ただし書の保存行為に該当します。
② 登記義務者1人の申請
抵当権者(登記義務者)が数名の場合、その1人から抹消登記を申請することはできず、抵当権者全員と登記権利者の共同申請により抹消しなければなりません。
判例は、登記履行義務は不可分債務としているので、抵当権の準共有者全員が抵当権の抹消登記の申請義務を負います。
抵当権設定者の死亡後に、当該抵当権が消滅した場合 |
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抵当権設定者(所有者)の死亡後に、抵当権が債務の弁済等により消滅した場合には、相続の登記を経なければ、抵当権の抹消登記を申請することができません。
抵当権者に相続や合併が生じた場合と抵当権の抹消登記 |
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① 抵当権者に相続や合併が生じた後に抵当権消滅の原因が生じた場合には、相続又は合併による抵当権移転登記をした後に、相続人又は合併後の承継会社自身を登記義務者として、抵当権の抹消登記を申請しなければなりません。
これは、抵当権の移転登記を要しないとすると、実体法上の権利変動の過程をできるだけ忠実に公示しようとする登記制度の理想に反するからです。
② 抵当権が債務の弁済等により消滅した後、抹消登記をしない間に抵当権者に相続又は合併が生じた場合には、抵当権移転登記をすることなく、相続又は合併を証する書面(会社の登記事項証明書)を添付して、相続人全員又は合併後の承継会社を登記義務者として、抵当権の抹消登記を申請することができます。
ただし、会社法人等番号を記載すれば、会社の登記事項証明書の添付は不要となりますが、その場合には、合併事項を確認することができるものでなければなりません。
申請人の住所、氏名、本店、商号等の変更・更正 |
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① 抵当権者(登記義務者)の住所、氏名等の変更・更正
抵当権の抹消登記を申請するにつき、登記義務者である抵当権者の本店が移転していて、会社の登記事項証明書にもその旨の登記がされている場合には、本店移転による所有権登記名義人住所変更登記をしなくても、この本店移転による変更を証する情報(会社の登記事項証明書)を添付すれば、抵当権抹消登記を申請できます。ただし、会社法人等番号を記載すれば、会社の登記事項証明書の添付は不要となります。
抵当権者の住所、氏名等の変更・更正についても同様です。
② 所有者(登記権利者)の住所、氏名等の変更・更正
所有者(登記権利者)に住所、氏名の変更又は更正がある場合には、その変更又は更正の登記をしてから、抵当権の抹消登記を申請しなければなりません。たとえ、住所移転を証する住民票の写し等を添付しても、所有権登記名義人住所変更登記を省略することはできません。
・関連ページ 登記名義人住所・氏名変更登記
4 添付情報
① 登記識別情報又は登記済証(登記義務者(抵当権者)の)
抵当権設定の際、抵当権者に通知又は交付された登記識別情報又は登記済証(権利証)の原本を提出します。なお、登記済証を提出した場合には、登記完了後返却されます。
登記識別情報の提供又は登記済証の提出ができない場合には、抵当権者の作成後3か月以内の印鑑証明書を添付します。
登記識別情報の提供又は登記済証の提出がない場合は、登記官によって事前に登記義務者である抵当権者に通知がされます(法23条)。ただし、資格者代理人(司法書士等)が当該登記の申請代理人となり、当該代理人による本人確認情報が提供されたとき、又は公証人による本人確認の認証がされた場合においては、登記官がそれらの内容を相当と認めたときは、事前通知をする必要はありません(法23条4項1号)。
・関連ページ 権利証、登記識別情報を紛失した場合
② 登記原因証明情報
登記原因証明情報については 不動産登記申請の添付書面(添付情報) の「登記原因証明情報」をご参照ください。
抵当権抹消登記の場合は、抵当権者が作成した解除証書や弁済証書、放棄証書等があります。
解除証書等を添付できない場合は、解除証書等の内容を記載した書面(報告形式の登記原因証明情報)を作成します。この報告形式の登記原因証明情報は、原本還付をすることができません。
③ 代理権限証明情報
代理人によって登記を申請する場合は、党外代理人の権限を証する書面(委任所等)を添付します。
④ 会社法人等番号
申請人が法人であるときは、会社法人等番号を記載します。
⑤ 変更証明情報
抵当権者の住所、氏名に変更がある場合には、変更を証する情報として、住民票の写し、戸籍の附票、戸籍謄本等を添付します。
抵当権者が法人の場合で、本店又は商号に変更がある場合には、変更を証する情報として、変更事項の記載のある登記事項証明書を添付します。ただし、会社法人等番号を記載すれば、会社の登記事項証明書の添付は不要となりますが、その場合には、本店又は商号の変更の経緯が確認することができるものでなければなりません。
5 登録免許税
不動産1個につき1,000円です。
登記申請書 抵当権抹消 見本 |
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・ ・ 登 記 申 請 書 ・ 登記の目的 抵当権抹消(注1) ・ 原 因 平成○○年〇月○○日解除(注2) ・ 抹消すべき登記 平成○○年11月28日受付第43883号(注3) ・ 権 利 者 東京都杉並区○○三丁目22番1号 ・ 山田 修(注4) ・ 義 務 者 東京都中央区○○六丁目25番8号 ・ 株式会社○○銀行 ・ (会社法人等番号 1234-56-789012)(注5) ・ 代表取締役 成田 節 ・ 登記識別情報(又は登記済証)を提供することができない理由(注6) ・□不通知 □失効 □失念 □管理支障 □取引円滑障害 □その他( ) ・ 添付情報 ・ 登記原因証明情報 登記識別情報 会社法人等番号 ・ 代理権限証明情報 ・ 平成○○年〇月○○日申請 東京法務局杉並出張所 ・ 代理人 東京都目黒区○○三丁目6番19-402号 ・ 上念司朗 ㊞ (注7) ・ 連絡先の電話番号 ○○-〇○○〇-○○○○ ・ 登録免許税 金2,000円(注8) ・ 不動産の表示 ・所 在 杉並区○○三丁目 ・地 番 116番9 ・地 目 宅地 ・地 積 148・46平方メートル ・ ・所 在 杉並区○○三丁目 116番地9 ・家屋 番号 116番9 ・種 類 居宅 ・構 造 木造スレートぶき2階建 ・床 面 積 1階 55・37平方メートル ・ 2階 48・02平方メートル ・ |
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(注1) 「抵当権抹消」又は「何番抵当権抹消」と記載します。
(注2) 抵当権が消滅した日とその原因を記載します。例えば、債務を完済し、平成○○年〇月○○日に抵当権の設定契約が解除されて抵当権が消滅したときは「平成○○年〇月○○日解除」と記載 します。
(注3) 登記の目的を「抵当権抹消」 としたときは、「抹消すべき登記」を受付年月日と受付番号で特定します。登記の目的を「何番抵当権抹消」として「抹消すべき登記」を特定した場合には、この記載は不要です。
(注4) 権利者として、現在の所有者の住所及び氏名を記載します。これは登記事項証明書に記載されている所有者の住所及び氏名と一致している必要があります。
(注5) 義務者として、抵当権者の住所、氏名、法人の場合は金融機関等の本店、住所、名称、商号、会社法人等番号及び代表者の氏名を記載します。なお、会社法人等番号を記載した場合には、履歴事項証明書や閉鎖登記事項証明書を添付する必要はありません(ただし、閉鎖登記事項証明書に現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている場合には、当該閉鎖事項証明に記録された事項は会社法人等番号で省略することはできません。)。
(注6) 登記義務者が登記識別情報又は登記済証を提供することができない場合は、その理由の□にチェックをします。
(注7) 代理人によって登記の申請をする場合は、代理人の住所、氏名を記載し、押印します。ここに押す印は認印でもかまいません。
(注8) 抵当権の抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
解除証書 抵当権抹消 見本 |
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・ ・ 抵 当 権 解 除 証 書 ・ 平成○○年11月28日東京法務局杉並出張所受付第43883号をもって 登記された下記の不動産に対する抵当権を解除します。 ・ ・ 解除原因 平成○○年〇月○○日解除 ・ ・ 平成○○年〇月○○日 ・ ・ 東京都中央区○○六丁目25番8号 ・ 株式会社○○銀行 ・ 代表取締役 成田 節 ㊞(注1) ・ ・ 不動産の表示 ・ 所 在 杉並区○○三丁目 ・ 地 番 116番9 ・ 地 目 宅地 ・ 地 積 148・46平方メートル ・ ・ 所 在 杉並区○○三丁目 116番地9 ・ 家屋 番号 116番9 ・ 種 類 居宅 ・ 構 造 木造スレートぶき2階建 ・ 床 面 積 1階 55・37平方メートル ・ 2階 48・02平方メートル ・ |
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(注1) ここに押す印については、別段の規定はありませんので、認印でもかまいません。
当事務所への抵当権抹消登記の申請手続に関するご相談、お問い合わせ方法 |
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